微妙な気持ちを伝え、時には争いごとも収める言葉。その力を育む、朝日新聞社とベネッセコーポレーションによる「語彙(ごい)・読解力検定」の受検申し込みが受け付け中だ。辞書の世界を描いた映画「舟を編む」に主演した俳優の松田龍平さんは、原作者の三浦しをんさんと対話を深める中で語った。「言葉は希望だ」と――。
――辞書の編集者を演じるにあたり、辞書をかなり読み込まれたのですか?
松田 今までとは違う目線で読んでみました。「国境」などの言葉を選んで、どんな語釈で説明できるかなと考えて。僕の演じる馬締(まじめ)光也が、辞書の紙にこだわるシーンがあるんですが、良い紙は、指に吸い付くようにめくれる。改めてめくってみたら気持ちよくて「これか!」と。
三浦 私も紙の辞書は大好きです。つい、いつまでもめくってしまう。ずっしりした重さとか、肉体と感覚にピッタリ来ます。
ところで映画の馬締は、私が小説で想像していた馬締よりも、もっと繊細で寂しかった。それが、辞書作りを通じてだんだん変わる。静かな物語の中に、少しずつあふれてくる情熱が感じられました。
松田 馬締は本好きで言葉も知っている。なのにコミュニケーションが取れない。言葉が何のためにあるのか分かっていないんです。劇中に「言葉は人とつながるため、気持ちを伝えるため、相手の気持ちを知るためにある」というセリフがあって、だんだんそこに気付いていく。ただ、「彼が変われたのは、天職に就けたから」とは考えたくなかった。きっと、馬締は営業にいても一生懸命に頑張って、人とコミュニケーションを取ろうとしたんじゃないかなと。そういう一生懸命な人だと思うんです。
三浦 一目ぼれした女性と観覧車に乗る場面では、つっかえながらも必死に言葉を発しますよね。さっきのセリフは、松田さんにも響いてきましたか?
松田 そうですね。言葉は人が作っているものじゃないですか。昔から残っている言葉もあれば、消えていく言葉もある。
三浦 その意味では、言葉はまさに生き物と同じですね。不完全で、すべてを伝え切れるわけではない。
松田 なぜ世の中には何十万もの言葉があるのかと考えた時に「人とつながりたい」という気持ちがあるからなのかな、と。日本語には、限りなくイエスに近いノーとか、微妙なニュアンスがある。殺し合いになりそうな場面でも、言葉で気持ちを伝え合えれば避けられるかもしれない。そういう気持ちが何十万もの言葉に集約されていると考えると「言葉って希望だな」と思えてきますね。
三浦 微妙な気持ちを相手に伝えるため、どんどん新しい言葉が生み出され続けていく。単に好きとか嫌いですむなら、百語もあれば十分かもしれません。
松田 石井裕也監督とは、撮影前から役作りなどでいろんな議論をしましたね。同い年なのでつい、負けたくないと意地を張ってしまって(笑)。例えばセリフの語尾を「よ」にするか「ね」にするかで言い合いになって。一文字違うだけでも、その違いには意味がある。今思うと、そこまで言葉にこだわる自分が不思議でしたね。
三浦 小説を書くときにも、語尾のニュアンスにはとても迷います。
――ところで、言葉の力を測る「語彙・読解力検定」の模擬問題をご覧になって、いかがでしたか?
松田 僕は勉強がダメなタイプでしたから。でも、大人になって改めて勉強するのは面白いかも。
三浦 学校の試験とは違って、やる気が出そう。
松田 不合格だったら落ち込むと思います(笑)。
三浦 ガビーンですね。
(2013年4月8日の朝日新聞 朝刊)
















































