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つながろう「ことば」で。

各界の著名人による「ことば」についてのコラム

俳優・松田龍平さん×作家・三浦しをんさん 

伝える・知る、人とつながるために
俳優・松田龍平さん

×作家・三浦しをんさん

コラムニスト 天野 祐吉さん

豊かなことば、心を結ぶ
コラムニスト 天野 祐吉さん

作家 三浦 しをんさん

好奇心、世界広げる
作家 三浦 しをんさん

元灘中・高教師 橋本 武さん

労力かけて学べば、いつか必ず役立つ
元灘中・高教師

橋本 武さん

作家 あさの あつこさん

「ことばを知ること」が「生きる力」に
作家 あさの あつこさん

作家 荒俣 宏さん

「背伸び」のススメ
作家 荒俣 宏さん

歌人 俵 万智さん

言葉のうたを三首
歌人 俵 万智さん

冨永 格さん

朝日新聞「天声人語」の執筆者より
冨永 格さん

俳優・松田龍平さん×作家・三浦しをんさん
俳優・松田龍平さん
まつだ・りゅうへい 1983年生まれ。俳優。99年「御法度」でデビュー。主な出演作は「まほろ駅前多田便利軒」「探偵はBARにいる」など
作家・三浦しをんさん
みうら・しをん 1976年生まれ。作家。「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞。「舟を編む」で本屋大賞。近著に「神去(かむさり)なあなあ夜話」など
映画「舟を編む」
映画「舟を編む」より/馬締光也役の松田龍平(左)と林香具矢役の宮崎あおい=(C)2013「舟を編む」製作委員会

 微妙な気持ちを伝え、時には争いごとも収める言葉。その力を育む、朝日新聞社とベネッセコーポレーションによる「語彙(ごい)・読解力検定」の受検申し込みが受け付け中だ。辞書の世界を描いた映画「舟を編む」に主演した俳優の松田龍平さんは、原作者の三浦しをんさんと対話を深める中で語った。「言葉は希望だ」と――。

 ――辞書の編集者を演じるにあたり、辞書をかなり読み込まれたのですか?
 松田 今までとは違う目線で読んでみました。「国境」などの言葉を選んで、どんな語釈で説明できるかなと考えて。僕の演じる馬締(まじめ)光也が、辞書の紙にこだわるシーンがあるんですが、良い紙は、指に吸い付くようにめくれる。改めてめくってみたら気持ちよくて「これか!」と。
 三浦 私も紙の辞書は大好きです。つい、いつまでもめくってしまう。ずっしりした重さとか、肉体と感覚にピッタリ来ます。
 ところで映画の馬締は、私が小説で想像していた馬締よりも、もっと繊細で寂しかった。それが、辞書作りを通じてだんだん変わる。静かな物語の中に、少しずつあふれてくる情熱が感じられました。
 松田 馬締は本好きで言葉も知っている。なのにコミュニケーションが取れない。言葉が何のためにあるのか分かっていないんです。劇中に「言葉は人とつながるため、気持ちを伝えるため、相手の気持ちを知るためにある」というセリフがあって、だんだんそこに気付いていく。ただ、「彼が変われたのは、天職に就けたから」とは考えたくなかった。きっと、馬締は営業にいても一生懸命に頑張って、人とコミュニケーションを取ろうとしたんじゃないかなと。そういう一生懸命な人だと思うんです。
 三浦 一目ぼれした女性と観覧車に乗る場面では、つっかえながらも必死に言葉を発しますよね。さっきのセリフは、松田さんにも響いてきましたか?
 松田 そうですね。言葉は人が作っているものじゃないですか。昔から残っている言葉もあれば、消えていく言葉もある。
 三浦 その意味では、言葉はまさに生き物と同じですね。不完全で、すべてを伝え切れるわけではない。
 松田 なぜ世の中には何十万もの言葉があるのかと考えた時に「人とつながりたい」という気持ちがあるからなのかな、と。日本語には、限りなくイエスに近いノーとか、微妙なニュアンスがある。殺し合いになりそうな場面でも、言葉で気持ちを伝え合えれば避けられるかもしれない。そういう気持ちが何十万もの言葉に集約されていると考えると「言葉って希望だな」と思えてきますね。
 三浦 微妙な気持ちを相手に伝えるため、どんどん新しい言葉が生み出され続けていく。単に好きとか嫌いですむなら、百語もあれば十分かもしれません。
 松田 石井裕也監督とは、撮影前から役作りなどでいろんな議論をしましたね。同い年なのでつい、負けたくないと意地を張ってしまって(笑)。例えばセリフの語尾を「よ」にするか「ね」にするかで言い合いになって。一文字違うだけでも、その違いには意味がある。今思うと、そこまで言葉にこだわる自分が不思議でしたね。
 三浦 小説を書くときにも、語尾のニュアンスにはとても迷います。

 ――ところで、言葉の力を測る「語彙・読解力検定」の模擬問題をご覧になって、いかがでしたか?
 松田 僕は勉強がダメなタイプでしたから。でも、大人になって改めて勉強するのは面白いかも。
 三浦 学校の試験とは違って、やる気が出そう。
 松田 不合格だったら落ち込むと思います(笑)。
 三浦 ガビーンですね。

(2013年4月8日の朝日新聞 朝刊)

<映画「舟を編む」>
 気の遠くなるような月日を要する辞書作り。その仕事に情熱を傾ける人々を描いた感動作。  玄武書房営業部で芽が出なかった馬締光也(松田龍平)は、辞書編集部に異動。個性的な仲間たちと新しい辞書「大渡海」の編集作業に打ち込むが、行く手にはいくつもの壁が。そして出会った運命の女性。果たして辞書は完成するのか? 恋はかなうのか?
 原作は三浦しをんのベストセラー小説。監督は石井裕也。出演はほかに宮崎あおい、オダギリジョーら。2013年4月13日から東京・丸の内ピカデリーほかで全国公開。

コラムニスト 天野 祐吉さん
コラムニスト 天野 祐吉さん
あまの・ゆうきち コラムニスト。1933年生まれ。雑誌「広告批評」(09年に休刊)で編集長を務めた。朝日新聞にコラム「CM天気図」を連載中。

◆「おケガですか?」に深~い意味
 日本人の「ことばの力」が落ちていると言うけれど、むしろ落ちているのは「聞く力」です。だから阿川佐和子さんの「聞く力」のような本が売れる。

 例えば病院で、三角巾で腕をつった知り合いに会う。そんな時「おケガですか?」って聞きますよね。それに対して「見りゃ分かるだろ」なんて応じる人がいたら、それは「聞く力」が足りない。

 「おケガですか?」という短い問いには「どうなさいましたか? 私は心配しております。よろしかったら、どうしてケガをなさったのか聞かせてくださいませんか。あまり話したくないなら『いえ、別に』とでも言ってくだされば、それ以上は追及いたしません」といった、さまざまな意味が含まれているのです。

 「聞く力」の貧しくなった世の中では、そうしたニュアンスがなかなか伝わらない。

 言葉は、意味だけでなく感情も伝えるものです。今話している僕の語り口を聞けば、言葉の不毛状態への嘆きが感じられるんじゃないかな。

◆「舌を巻く」は「キスがうまい」?
 感情の機微、つまり細やかな揺れを表す言葉は、どんどん失われています。「舌を巻く」は「キスがうまい」、「額を寄せる」は「熱を測る」ことだと勘違いしている若者がいました。こうした「からだ言葉」は、失われつつある言葉の典型です。

 限りある言葉を無限に広げようと、ご先祖さんは努力してきました。それなのに、例えば「頭に来る」「はらわたが煮えくりかえる」「むかつく」といった表現が「腹が立つ」だけになってしまったら、それこそ腹が立ちますよね。

◆「えふりこき」って知ってます?
 感情の機微を表す言葉の宝庫は、方言です。例えば秋田弁に「えふりこき」って言葉があります。これは「いい格好をする」っていう悪い意味から「誇り高い」「弱みを見せない」という良い意味まで、とても幅広い。使われる文脈や言い方によって、ニュアンスは変わってくるのです。

 明治以後の教育は「読む力」と「書く力」、つまり意味を伝えることに重点を置き過ぎて「聞く力」「話す力」をおろそかにしてきた。素早く間違いなく伝わる「共通語」が作り出され、方言はまるで「悪い言葉」であるかのように封じられてきました。

 確かに、その方がコミュニケーションの効率はいい。だけど、効率一辺倒では困る。意味の伝え合いより心の伝え合い。それが大事なんだと、いまはみんな気づきつつあるんじゃないでしょうか。

 語彙・読解力検定には「からだ言葉」も多く出題されてますね。感情の細やかさを伝える言葉を生かすには、みんながその言葉を理解できることが前提です。その意味で、この検定が言葉を豊かにすることにつながればいいですね。

 (2013年3月8日の朝日新聞 朝刊)

作家 三浦 しをんさん
作家 三浦 しをんさん

●作家・三浦しをんさんに聞く
 子どもの頃から本が好きでした。父は国文学者なので、書斎には本がいっぱい。私は書斎に入っては広辞苑を取り出し、床に座ってめくっていました。幼稚園ぐらいのころですから、まだ読めはしません。広辞苑の分厚さや重み、紙のひんやりした感触やインクの匂いが好きでした。

 中学生になると、辞書に載っている仏像の図版を、ノートに模写していました。大日如来とか、不空羂索観音(ふくうけんじゃくかんのん)とかを気の向くままに。それが楽しかった。

◆辞書手放せない
 作家になってからは、ますます辞書を手放せなくなりました。新しい辞書を買えば、エッチな言葉を調べます。どう説明しているのか知りたい好奇心というか下心、欲望ですね。調べる時は、目的の言葉に行き着くまでに、別の言葉や図版にも寄り道します。その度に、まだまだ知らない世界があるな、と気付かされる。

 小説を書くときは、すごく考えて言葉を選び、場面によっても使い分けます。「とても喜んだ」と書くか「欣喜雀躍(きんきじゃくやく)した」と表現するかなど、辞書を引いて、微妙なニュアンスを考えて決めます。大切なのは、多くの人に同じ意味に取ってもらえるような言葉を選ぶこと。でないと、自分の思いは正しく伝えられません。そのためにも、語彙は豊富な方がいい。

 何を見ても「きれい」「かわいい」と言うだけでは、気持ちは伝えきれません。知っている言葉だけでいい、通じる人とだけ通じ合えればいいと考えていたのでは、語彙は増えないでしょう。

 語彙を豊富にするには、好奇心を伸ばすことです。子どもの好奇心を育てるのは、大人の責任です。興味を伸ばして「知る楽しさ」を感じさせる。そうしないと、「マジうぜえ」の一言で会話が終わってしまう若者ばかりが育ってしまう。

◆通じ合うために
 私の語彙も、それほど多くはありません。でも、多くありたい。知らない世界を知りたいと願う好奇心は、持ち続けています。

 コミュニケーション力は、読解力なのだと思います。読解力とは文章を読み解くことだけじゃない。相手が何を考えて語り、行動したのか、言葉だけでなく表情や身ぶりも含めて読み取ることです。

 私も、例えば編集者から「何とかなりますよ」と言われると「原稿が遅くて怒っているのだろうか」などと、言葉の裏を読もうとする。でも、時にそれは的外れだったり、空回りだったりします。読解力って、ものすごく大事です。

 お互いに行き違うこともありますが、言葉は、相手を傷つけ怒らせるためではなく、通じ合うためにこそあるのです。「おまえも俺も、存在して良し!」と思うために。だからこそ「もっと語彙を広げよう」と、前向きに考えることが大事なのではないでしょうか。

◆準1級難しい!
 語彙・読解力検定の準1級、難しいですね。語彙問題は漢字も手ごわいし、経済用語なんて、全く知らなかった言葉もあります。

 読解問題は好きです。「引っかけ問題だな、これ」なんて出題者の意図を探り、裏をかき合う。問題文の筆者だけでなく、出題者ともコミュニケーションする気分になれます。

 検定の受検をきっかけに好奇心を伸ばして、「新聞をよく読もう」とか「知らない分野にも関心を広げよう」と考えてみるのもいいでしょう。

 もし、検定で初めて出合った言葉があって、その時は意味がわからないまま終わってしまったとしても、その出合いは頭に残ります。別の機会に、またその言葉に触れれば「これ、見覚えがあるな」と思い出す。そんな出合いを繰り返して、言葉はだんだん自分のものになっていくのです。

 (2012年8月20日の朝日新聞より)

元灘中・高教師 橋本 武さん
元灘中・高教師 橋本 武さん

「すぐに役立つことは、すぐに役立たなくなる。労力をかけて学んだことは、いつか必ず役に立つ」「国語は学ぶ力の背骨である」

 橋本武さんの言葉だ。71歳まで続けた灘中学・高校での教師生活で指導した教え子には、作家の故遠藤周作さんや、黒岩祐治・神奈川県知事らがいる。

 橋本さんを「伝説」にしたのは、中学の3年間をかけて中勘助の「銀の匙」を勉強させた授業だった。「銀の匙」は約100年前に書かれ、病弱な少年の成長を描いた自伝的小説。夏目漱石が絶賛し、世代を超えて読み継がれている。

 教科書は、橋本さん独自のプリント。それらは、「銀の匙」の75の章別に作られている。

 上のほうに「注意すべき語句」が並び、その下に生徒が意味を書き入れる。「粉煙草」「ふっくらとした音」など、語句の選択は幅広い。次に、これらの語句を使った「短文の練習」欄が続く。さらに、各章の表題を生徒が考えて書き、章の内容を整理したり200字に要約したりもする。「主題の取り上げ方に、どんな工夫がなされているか」などを説く橋本さんのヒントを参考に、「鑑賞ノート」にも取り組む。

 生徒たちはこのプリントを仕上げることで、いつの間にか国語力を身につけたという。

 それだけではない。橋本さんは、小説に「河童(かっぱ)」という言葉が出てくれば、河童にまつわることわざや各地の伝説を教えた。駄菓子の描写があれば、駄菓子を食べさせた。体で物語を味わわせようという狙いだ。

 読解の域を超えた、横道にそれた指導。だが、そこにこそ宝の山があった。「横道にそれる授業を意識した。横道から戻ると、本筋が前より豊かになる」

 橋本さんが「銀の匙」と出会ったのは、教師になって間もない頃だった。「『たおたおと羽ばたいて』といった表現の美しさにひかれました。また私も幼少期に病弱だったので、主人公と重ね合わせられました」

 戦後の墨塗りの教科書の時代、生徒の中に生涯残る教材を探していて「銀の匙」を選ぶ。教える前に、疑問点を中勘助本人に手紙で尋ねた。やがて交流が始まり、いつしか、家を訪問するまで親しくなっていた。

 「学ぶ力の背骨」としての国語力を習得するには何が必要か。橋本さんは、手当たり次第に本を「読む」ことを勧める。「いろんな情景を思い描く力がつきます」。次に「書く」こと。判断力、集中力、構成力が養われる。橋本さんは生徒に読書感想文を書かせたが、出せば満点にしたので、生徒は自由に書けた。「手書きがいい。パソコンでは、せっかくの能力を伸ばすチャンスを逃してしまう」

 学生時代、「大漢和辞典」を編集した諸橋轍次(てつじ)さんの仕事を手伝った。諸橋さんの「何でも突き詰めてゆく態度」を見て、影響を受けた。それが、後の指導法につながった。

 71歳で教師を辞めると、今度は「源氏物語」の現代語訳にライフワークとして取り組んだ。足かけ9年、94歳のときに和とじ本63冊として完成させた。今は、120歳の大還暦まで生きるのが夢だ。そんな橋本さんは最近、こんな歌を詠んだ。

 <生きるとはこの世に享(う)けし持ち時間悔いを残さず使い切ること>

(2012年4月21日の朝日新聞より)

俳優・松田龍平さん×作家・三浦しをんさん 

伝える・知る、人とつながるために
俳優・松田龍平さん

×作家・三浦しをんさん

コラムニスト 天野 祐吉さん

豊かなことば、心を結ぶ
コラムニスト 天野 祐吉さん

作家 三浦 しをんさん

好奇心、世界広げる
作家 三浦 しをんさん

元灘中・高教師 橋本 武さん

労力かけて学べば、いつか必ず役立つ
元灘中・高教師

橋本 武さん


作家 あさの あつこさん

「ことばを知ること」が「生きる力」に
作家 あさの あつこさん

作家 荒俣 宏さん

「背伸び」のススメ
作家 荒俣 宏さん

歌人 俵 万智さん

言葉のうたを三首
歌人 俵 万智さん

冨永 格さん

朝日新聞「天声人語」の執筆者より
冨永 格さん

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